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幻想と日常 ~La Fantazio kaj la Kvotidiano

【詩】『夏の幻想 最終回』


残暑見舞いのはがきの裏
目に見えていた夏
耳に届いてきた夏
手で触れて感じた夏
口で味わった夏
そして空気に漂う
夏の香り
みんないなくなってしまった

あの時五感で触れていた夏は
どれもこれも消えていった
あの時当たり前にあった夏は
どれもこれも
幻想へと姿を変えた

大輪の向日葵も枯れ
朝顔の蔓も茶色く干からび
蝉の声も遠くなり
アスファルトの逃げ水も消え
夕立が運んでくる
雨の香りも薄れ
蚊取り線香の香りでさえ
よそよそしさを感じてしまう

夏はその終わりが突然すぎて
戸惑いを隠せない
夏の間当たり前にあったことが
すべて幻へと変わってしまう
蝉のぬけがらをひとつ
掌に乗せて
逝く夏の幻想をまだ
追いかけていた

夏よさようなら
すべての幻想たちよ
また来年逢えるだろうか


(これを以て「夏の幻想」シリーズは終わりです。ご静読ありがとうございました。)
by fibich | 2004-08-31 20:06 |

詩と写真の日記

by 遊羽(なめタン)
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