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幻想と日常 ~La Fantazio kaj la Kvotidiano

【詩】大浦洞(テポドン) ~대포동


南の大浦洞は雪嶽山(ソラクサン)の麓
朝日のきれいな穏やかな海岸
夕暮れ時 おでん屋台がせわしなさそうに店を畳み
観光案内所では日本語も話せる人が常駐している

こぢんまりとした松の木の公園は人影も少なく
静寂が染みいる青い空の下
波穏やかな日本海から吹く風が心地よい

こんな平和な海岸も幾たびと緊張に包まれ
痛ましき民族戦争の落とし物が時折流れ来る


北の大浦洞は殺人の道具が配備され
いつだって他国を威圧するかのように鎮座する
この21世紀には必要のないものの名前になって久しい

今や民族対立などはどうでもよくなった
ゆゝしき過去を引きずりながら
歪な抑圧に人を縛り付けながら
ほんの一握りの愚か者だけが良い思いをする国となる

そんな国の虚勢の象徴がこの場所に配備され
その場所の名前をつけられた兵器がいまでも
日本海の向こう側を虎視眈々と睨み付けている

ある日南の大浦洞に日が昇る前
北の大浦洞は放たれた
虚勢の国の威圧の小道具は
平和を望む人々の愚かな過去を呼び覚ます
虚勢の象徴は歌わずには居られない
己の存在を懼れよと歌わずには居られない
人は愚かしき歴史を見て多くを学び
学んだ分だけ先を見る能力をつけたはずなのに
愚かしき歴史はそれでも繰り返される

南の大浦洞にまた人が集うように
北の大浦洞にまた兵器が集う
同じ言葉の同じ名前を持ちながら
半世紀の時の流れは両者をこれほどまでに分断させてしまった

南の大浦洞のベンチに腰をかけながら
海の向こうの祖国の歌を歌ってみた
心地よい風が雪嶽山から吹き下ろして
遠いあの雲の向こうへと連れて行った


【詩】大浦洞(テポドン) ~대포동_a0004070_334125.jpg

by fibich | 2006-07-09 02:45 |

詩と写真の日記

by 遊羽(なめタン)
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