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幻想と日常 ~La Fantazio kaj la Kvotidiano

【詩】『路上』


恐妻節を声高らかに
女に逃げられた男が過ぎゆく
能書きたれの高校生
口だけ達者だけど
突っ込んできた車には
全くの無抵抗
女が笑う
意味もなく笑う
かわいく笑う
行き過ぎて憎らしくも感じる

自転車に乗った
若い警官は
「オレは拳銃が持ちたくて警官になった」と
卒業の時に友人に触れ回っていた
パトロールする振りをして
拳銃を使うチャンスをうかがう
忙しそうな振りをして
長髪銀縁眼鏡小太りで
いつも紙袋を下げている
モバイル兄貴が通り過ぎる
インターネットのエロ画像を
ホットスポットでダウンロードする

正直言って
誰が「善良な市民」なのか
口うるさく捲し立てて
結局自分が善人であることを
アピールする知識人
家に帰れば
自宅の庭で
大麻を栽培している
寂しい顔をしながらも
選り好みが激しい女ども
いつも束になっては
鳴らない電話をぶら下げている

音楽通ぶった男が
講釈を垂れる
ヘッドフォンから聞こえないように
アイドル歌手のヘタクソな歌を聴く
しかも
MDで聞く
しかも
1曲だけを
くり返して聞く
俺の青春はクラプトンだと偉ぶって
娘にレイラと名付けている

祭りが終わって寂しがっている
お祭り男は
ただでさえうるさい奴
けど なぜか憎めない奴
抜け目のないあいつは
聖人面して
女のシリを追いかける
すでに誰もが
自分の素性を知っているとは
夢にも思わず
金儲けに失敗した欲が服着たようなあいつは
お金なんてと
負け犬の遠吠え

昨日まで馬鹿にしていた
ストリートダンスに
心の底から感動したのに
もう
体の自由が利かなくなってしまったと
嘆いていたが
自分が同じように
感動を与えられるか考えてみたら
とたんに何とも思わなくなった

尾崎豊は死んだんだ
死んだけど 死んでないのは
それこそ肉体と違って
精神に死はないことの証拠さ
でも尾崎豊は
死んだんだ

挨拶ばかり上手な奴ほど
いい加減で薄情だって
挨拶もできない奴らが
冷笑する
時間に追われて疲れた人は
時間を浪費するよりはマシだと
自分に言い聞かせる
何のために 何を求めて
この路上を往来するのか
その目に何が映っている
その耳に何が届いている
己の五感さえ忘れてしまって
それが人間の生き方なのか
それでも
限られた時の
あまりに少ないことさえ知らぬ者よりは
立派に生きているんじゃないか

売り切れ続出の人気商品に
法外な値段が付けられる
ブームは渦を巻くが
その渦の真ん中にいるのは誰だ

結局みんな
病んでいるのさと
感じだした頃
ああ
危ないなと
ふと気づいた頃
路上は鬱積の洪水に飲まれ
社会の歯車にしかなれない
小さな自分がいた


by fibich | 2004-02-27 00:12 |

詩と写真の日記

by 遊羽(なめタン)
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