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幻想と日常 ~La Fantazio kaj la Kvotidiano

【詩】『坂の街』

歩いていました
登ったり下ったり
坂の街の狭い路地を
野良猫を押し分けて
時々迷子になって
時々眼下の海を見下ろして
歩いていました
坂の街の
狭い路地を

歩いていました
息をハアハア切らせて
坂の街を
寺の多い街を
他の観光客とすれ違い
時々メランコリックになってみたり
時々思い出したように空を見たりして
歩いていました
坂の街を
寺の多い街を

こんな街なら
いっそ住んでみたい
久しく忘れていた
妙に懐かしい感覚を
坂の途中で
波止場の前で
思い返していました
坂の街
初めてなのに
どこか懐かしい
坂の街
誰かと歩いた思い出が
こゝで突然
浮かんできました
初めて歩いた
坂の街なのに

日が暮れゝば
遠くの島々に
太陽は沈んでいきました
瀬戸内の島々が
その姿を横にしながら
一緒に眺めているようでした
真っ赤な太陽を
あの太陽が再び昇る頃
僕はもう
こゝにはいないんだと
痛いほどに感じました
坂の街
思い出が多すぎて
歩けば歩くほど
迷子になりそうで
そんな街とも
別れの時が来ることを
沈む太陽に
教えられました

歩いていました
夢のような街並みを
夢のような裏路地を
いちいち何かを見つけては感動し
いちいち何かに気がつけば感動し
歩いていました
坂の街を


*初稿:2003年
by fibich | 2005-12-03 02:56 |

詩と写真の日記

by 遊羽(なめタン)
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