2005年 11月 14日
【詩】『川を渡る列車』
渡った川は
ちょっと前まで
簡単には渡れはしなかった
青っぽい列車が行く先に
まだまだ容易には渡れぬ場所がある
一つの国
一つの民族を分断し
流れ続ける川を渡り
列車は青っぽくてどこにでもある通勤列車だけど
その意味は遙かに重くて
希望に満ちているのかも知れない
青っぽい列車に乗って
簡単に渡ってしまった
この川の冷たさに涙し
この川を越えられずに命を落とした者達の
ため息や嘆きなど
知った気になって
今日僕も
この川を渡ってしまった
鉄馬は走りたいと書いてある
古い看板を素通りする時代が
こんなに早く来るとは思わず
それでもなお
川を渡ったすぐ先で
青っぽい列車は止まってしまう
そこよりも先へと
同じ列車で進める時代が
いつになったら来るのかは
まだわからないけれど
青っぽい列車に乗って
川を渡りました
昔は渡るに渡れない
冷たい川でした
青っぽい列車が鉄橋の上
鈍い音を立てながら
その先へ延々と走っていけることを
祈っているようだった
by fibich
| 2005-11-14 02:30
| 詩