2020年 06月 26日
【地名考】星の名前からついた地名(後編)
さて、前回から始まった北海道北斗市の地名考。前回もまたこれまで通り合併への経緯の詳細ばかりで面白いところは何もなかった。先に書いておくがここから先も同じようにつまらない内容が続いていく。
まず前回書いていなかったと思うので応募に関する数字を紹介する。応募者総数は1744人、応募総数は2342件。寄せられた名称は1370種にまで達していた。
前回は新市名の名称を決めるために「合併新市名称選考小委員会」(以後「小委員会」)が設置されたところで終わっている。1回目の小委員会は平成16年8月11日に行われている。前回も少し書いたがこの時の内容は役員選出に始まり最後に絞り込む5点についても5点に拘らず柔軟性を持たせることが決められた。他に以下のことが決められている。
○選考手順と方法
・第1次選考:各委員がそれぞれ10点の候補名称を選定
・両町名の町名以外に「函館」と隣接の町名(「七飯」「森」「木古内」「厚沢部(あっさぶ)」)を含んだ名称候補は除外
・第1次選考での順位や得点はつけない
・第1次選考で選定された名称は名称ごとに委員全員で合議の上で絞り込みをさらに行う
・協議会に提出する候補にも点数と順位はつけない
○次回以降の日程
日程を決定する。次回の会場は上磯町役場
○各種報告
平成16年8月16日に第2回小委員会が開催される。ここでの報告、決定の主たるものは
①第1次選考結果
54点が報告。第2次選考として各委員がそれぞれ5点を選定。54点中地名が特定される可能性のある5点は除外し49点が候補となる。(こういったものをこの協議会以外でも「偏った地名」とよく呼ぶ。)
ちなみに除外された候補は会議録に記されていたので紹介すると
有川市 海田市 桜ヶ丘市 陣屋市(「じんや」「じん屋」も含む) 吉沢市
以上の5種類は除外されている
②第2次選考結果
49点から26点に絞り込まれる
③第3回小委員会での選考方法について
当初2つの意見が出される。1つ目は点数化をするのではなく、名称を考えた理由を小委員会内で確認をすべき。二つ目は山や川があるからではなく、歴史的背景なども考慮し全国的にアピールできる名称を考えるべき。以上の二つはこの次の小委員会から選考においての留意点ともなる。
平成16年8月23日に第3回小委員会ではまず第3次選考についての協議から始まる。26の候補名称が7つの選定基準のどれに当てはまるのかを各委員がそれぞれ評価し、その傾向を整理した上で第3次選考として絞り込みを行うこととした。
わかりにくいのは具体的な候補名が公表されていないからで、26点から絞り込むときに選定基準最優先で審議が行われ、適合しない者は容赦なく除外するあたりが他の合併協議会にはないやり方でもあった。前回も書いたがここで改めて7つの基準を記してみる。
1 住民が愛着を持つことができる名称
2 地域の歴史・文化、特徴を表す名称
3 地域に縁やゆかりのある名称
4 知名度の向上やアピール性が高まる名称
5 地域の特性を踏まえた名称
6 地域住民の理想や願いにちなんだ名称
7 地域が地理的にイメージできる名称
これに照らして選定基準が行われ、その結果として
6つに当てはまった名称 2点
3つに当てはまった名称 2点
2つに当てはまった名称 3点
1つに当てはまった名称 9点
1つも当てはまらなかった名称 10点
この結果から次の3つに該当した14点を除外。
1:基準に一つも当てはまらない名称候補10点
2:「渡島」がからむ名称3点のうち「渡島中央」を除外
3:その他3点を除外(「温根別」「未来」「平和」)
小委員会の会議録、資料は非公開なのでこう書いても絞り込まれたもとの26点がわからないのでは読んでいてもピンとは来ないと思うが、もう少し辛抱を。
こうして候補を12点まで絞り込み、次の小委員会での選考方法についての協議も行われる。
・12点の候補名称を各委員が持ち帰り、最高12点から最低1点までの評価をつけて集計。
・次の絞り込みを5点にするかどうかは集計結果を見てから判断。
平成16年8月29日に開かれた第4回小委員会では次のことが決定となる。
①最終選考について
各委員持ち帰りによる点数評価した集計結果で上位5番目が2つあり、上位5位の名称は6点。これによって以下のように決定。
1:「渡島」に絡む2名称は2つとも選考。
2:同点数の5位ふたつも協議会にあげて6名称を選考。
ここで初めて具体的な候補名が登場する。
○地域の歴史、地理的イメージを表した名称に相応しいと言うことで「渡南(となん)市」「南渡島市」「渡島市」
○将来に向けて夢や希望など明るいイメージ抱いた名称として相応しいということで「青葉市」「北斗市」
○生活基盤を基にした地域の特性を表した名称として相応しいということで「稲海市」
以上6点に絞り込まれ、平成16年9月6日に開かれた第9回協議会で報告された。この日は報告があっただけでそれ以上の選定は行われていない。
平成16年10月12日に開かれた第11回協議会でこの先の選定方法が協議される。その結果2段階に分けて選定することが決定。1回目の選定で6点から3点まで、各委員2点を選んで絞り込む。2回目の選定では3点から各委員が1人1点を選んで1つに決めることになる。また参加委員のスケジュールの都合で第13回協議会で選定を行うことと決まる。
平成16年11月6日の第13回協議会で選定が先述通り2段階で行われる。この日は新市名決定と言うこともあり渡島支庁から副支庁長も同席している。やはり渡島支庁としては渡島という名前かそれに絡んでいる名前が選ばれる瞬間をその目で見たかったのではないかと思われる。
第1段階で6候補の中から各委員が2点ずつ選び、3つまで絞られる。結果は
青葉(6) 稲海(5) 渡島(8) 渡南(10) 北斗(13) 南渡島(8)
ここで上位2位までの北斗と渡南が決定、3位は渡島と南渡島が同数のため2つから1つを決めることとなり、結果は
渡島(14) 南渡島(11)
で渡島が3位として確定。
第2段階ではこの3候補の中から各委員が1点選び、最終選考となる。結果は
渡島(4) 渡南(8) 北斗(15)
最多得票の北斗が過半数を上回る得票だったために新市名称は北斗市と決定された。
こうして途中の小委員会での絞り込み状況は謎のままではあるが、最初は得票数から絞り、次に基準に照らして一つ一つ審議の上絞り込み、最後は協議会で投票により決定。これだけの手順は他所の協議会でも同じように行われてはいるが、小委員会で最初に設けた「基準」を重視しそれに見合わなければ次々と切り捨てていくという厳しい審査の過程を経て「北斗市」という名前が選ばれた。個人的には「あ、いいんじゃないこの名前」と思うのだが、これでさえ結構反発はあったようだ。しかし今となってはごく普通に北斗市として函館の西隣にしっかりとその存在を誇示している。
今回はわりと資料が残されていたので経緯などはつかみやすかったが、それだけに小委員会での動きがまったくわからないのが悔しいところだ、いったいどんな名前の候補が49点にまで絞られたのか、そのあたりも知りたかった。しかし応募時点の1370候補名リストは「協議会だより」で発表されていたので次回はこれを基にこんな名前も応募されていたのだというものをツッコミとともに紹介したと思う■
◎地図出典「市町村変遷パラパラ地図」
by fibich
| 2020-06-26 19:36
| 平成大合併新地名考