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幻想と日常 ~La Fantazio kaj la Kvotidiano

凋落する北海道⑥

 北海道の現在の過疎化問題、札幌一極集中の問題について書くのはそろそろ終わりにしようと思い、今回とあと1回で終わらせる予定です。

 前回は鉄道がしっかりしていない問題をあれこれ書いてみました。その前が道路、要するに国も人体と同じで人や物が末端まで流れなければどんどんと悪くなっていくのは同じ。人や物が血液や酸素だとすればそれが行き届かない場所はだんだんと悪くなり最後は壊死してしまう。そして人体で言う血管に当たるものが国では道路だったり鉄道だったりするのだろう。そしてそれは北海道に限ったわけではないというのは以前にも書いたとおり。

 本州から海を隔てて離れているのは北海道の他に四国と九州、沖縄などの島嶼がある。そのなかから島嶼は除いて四国を例に挙げよう。四国も北海道と負けず劣らずの条件下だ。むしろ四国の方が日本のイナカという感じもするだろう。しかし四国はいくら末端の地方に足を運んでも寂れてどうにもならないという焦りは感じられない。町も市もそれなりの生活が維持され、そこに人々が生活をしている。なにかやせ細っていくような危機感も感じなければ過疎化が進んで限界集落と言われている場所でさえもその変わりようが急ではない。言うなれば四国は末端にまで血が行き届いている。

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◆四国の典型的な過疎集落(愛媛県久万高原町)しかも豪雪地帯

 四国には札幌のような華々しい大都会はない。鉄道だって北海道以上にお粗末なものである。なにせ真ん中は激しい山地なので南北が分断されている感は否めない。地理的には北海道よりもずっと「試されている」場所でもある。そんな四国は山間部でも村があればその必要最低限の生活は保障されているし、海沿いの場所でもそれなりに行政のサービスは行き届いている。

 たいして条件は似てはいないが、北海道と四国とではこれだけの差があるのはどうしてだろう。確かに北海道と違って四国には人が住んでいた歴史が長いと言えば長いのだが、果たしてそれだけの違いでこうも違ってくるのだろうか。行く度に痩せ衰えていった北海道の地方町村に較べ、四国では山間の集落でも何でも全然違いがない、むしろどんな場所でも確実に前に来た時よりも発展している。上の写真は四国のかなり都市部から離れた町の外れの集落でしかも冬場は雪も降る。しかし見た感じはそんなに寂れて危機感も感じられない。日本の過疎集落にはまだこのくらいの余裕のある場所も多い。

 僕はプロの分析家でもないのでこの当たりの違いを分析して四国にあって北海道に何がないのかを突き止めることはできないのだが、明らかに四国には北海道にないものが働きかけている。四国は北海道に較べるとなんでも規模が小さい。観光資源にしても、産業にしても、農水畜産物にしてもしかり、それなのにどうしても両者を較べると北海道ばかりに凋落ぶりが感じられてならない。北海道が寒いからなのか、そんなだけの理由ではない、だとしたら四国の夏は暑すぎる。

 ここで言いたいのは同じ日本でありながらこの差はいったい何なのだろうということだ。確かに北海道は住むには厳しい場所なのかも知れないが、1世紀以上も前から人間の知恵と勇気で克服ができたはずだ。それに較べたら四国に移り住むのに知恵も勇気も要らない。もしかして北海道の現状を打破する解決策が道外にあるのではないかと最近ちょっと思うのだ、そして四国にもなにかヒントがありそうな気がする。気がするだけでそれが何なのか特定できないのが歯がゆいところだ。

 これまでの問題はすべて北海道内部にある「人の動きとその手段」に関わるものばかりだったが、次に3つほどこの先心配と思えるものを簡単に書いてみる。

 ひとつは地球温暖化と異常気象が北海道にも影響を及ぼしているのかも知れない。夏の高温、多雨はここ最近になって現れたものではないかと思う。ここ数年言ってしまえば北海道の夏は本州の梅雨時みたいな状態が多いような気もする。もちろん本州の異常なほどの多湿は北海道にはないが、少なくともスカッと晴れずに何日も雨ばかりという事が増えたように思える。このところの気象変動、異常気象が住みやすかった場所を住みにくい場所に変えてしまった可能性は否めない。

 夏の高温があれば、地域的には冬の異常低温もあると思うのだが、もともと北海道の冬は凍てついていて当たり前なのでそのあたりは目立たない。目立たないけど異常低温が続くのも間接的に他の問題と繋がってはいるのではないかと思っている。

 次に地方都市の内部からの破壊だ。ハッキリ言ってしまえば大手スーパーのAグループ。Aグループは地方都市に目をつけてこれまでの都市開発の一部を担うつもりで突拍子もない場所に大型商業施設をドンと作り、町の中で昔からあった人の流れや商売の動きを根底から破壊して町の空洞化の原因になっている。そして業績が伸び悩むとすぐに撤退するが、壊れてしまった町の中心の人の動きや商売の動きはそのまま放置だ。まさにどこかの大手食品メーカーが熱帯雨林を切り開き牧場を作り、それが使えなくなるとまた他の場所へと移動し、牧場の使い捨てをしているのと全く同じ事をしている。このAグループの独善的なやり方が観光地から観光客を奪い取り、人の流れを不自然なものにさせ、その流れに公共交通機関が反応してこれまで賑わっていた場所が不便な場所へと変わり、町そのものの構造を引っかき回すだけ引っかき回す。おまけに他社とは互換性が乏しい自社電子マネーを地域の住民に浸透させ、最後は風のように撤退していく。北海道はこのAグループによって幾つかの町が振り回されている。そしてこのやり口は北海道に限ったわけではないのだ。(四国でもあったような…)本州でも引っかき回された町があるのに、北海道の今の地方都市にはそれに対する耐性はほとんどないのではないだろうか。地方の町村にセイコマやツルハができるのとは訳が違う。

 もう一つは国際情勢の不安定が不安材料でもある。一昨年ロシアがウクライナのクリミアを無理矢理に併合した。ロシアはかつてどさくさに紛れて日本の領土に侵略して勝手に自分の領土としてしまった。日本政府は択捉島までの北方四島の領土権は主張しているが南樺太と得撫島から占守島までの千島列島を未だにロシアの領土とも明記はしていない。どちらにしても根室管内の6村(色丹、留夜別、泊、留別、紗那、蘂取)が該当し、行施上は根室管内なのに人口推移の統計はずっと空白のままだ。

 クリミア侵略をテレビを通して目の当たりにして以降いつかはロシアがどさくさ紛れで北海道に侵攻してして来やしないかとちょっと不安になる。いや、これ僕はけっこうマジで心配しているんだよ。ロシアは北海道を虎視眈々と狙っている。北方領土が占領された時も本当は北海道北部(釧路から旭川あたりを斜めに線引きした北の部分らしいが)を侵略して領土にしようと企んでいたことも明らかになっているし。稚内や根室などでは案内標識の地名にアルファベットと一緒にクリル文字表記があるのも見ていてあまりいい気がしないのがホンネである。

 僕は普通の人よりもちょっとだけ北海道に詳しいだけで道民でも道産子でもない、北海道に一時移住を希望していたが今ではそれもない。かれこれ8年も北海道にも行っていないし、もうおそらくは行くこともないと思う。それでも北海道でちょっとした明るい兆しがあるとそれが気になってしょうがない。良いことは良いとは思うのだが最後の数回で見た北海道の急速な変わりようが同時に気にかかる。この先北海道がどうなって行くのかは直接僕には関わりのない事だが、こと北海道の事となるとこれだけ気になってしまうのだから僕は未だに北海道のどこかに夢を持ち続けているのかなと思う■

by fibich | 2016-04-01 15:10 | 日常の話

詩と写真の日記

by 遊羽(なめタン)
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