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幻想と日常 ~La Fantazio kaj la Kvotidiano

凋落する北海道②

【札幌一極集中の現状】

 前回に続いて今回も僕が現在北海道に対してどう感じているかを書いてみようと思う。前回は漠然と北海道は末端が寂れているという内容だったが、今回はそのあたりもっと突っ込んで書いてみたいと思う。

 これから日本の人口は減少傾向にあるので、これから書くことが北海道だけの問題とは言い切れないのだが、北海道の地方に行くと感じられる寂れ方は北海道以外の場所に較べても深刻に感じてならない。

 とある国土交通省北海道局の人口に関する資料によれば、北海道の人口減少は1997年をピークに減少していて、その減少傾向も全国の十年先を行くらしい。そして高齢化は1995年から全国を上回っている。これだけの数字は今になって分かったわけでもないだろうに、この兆しに対して何らかの策は打っていなかったのか。

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◆国土交通省北海道局の人口動態に関する資料から(H26年)

 この図を見てもハッキリ分かるが詳細などはどうでもいい、どのグラフも右肩下がりであることが現状を物語っている(しかもかなりの角度で右に下がっているのも気にかかる)

 総務省の全国人口推移(H26年版)を見ても人口増になっている場所はほとんどない。北海道自体が0.54%減だ。札幌市は0.41%増である。この増加率がよその場所に較べても軒並みマイナス成長である。中にはマイナス3%を下回る場所もある。

 さらにこのデータを北海道の14支庁別に見てみた。と言っても全てを見るには時間もかかるのでそれぞれの支庁所在地の推移だけを見る。そこから分かることはたとえば札幌市は人口増とはいえ、札幌市がある石狩支庁の他の市町村は減少傾向にある事には変わらない。さらに石狩支庁にある当別町と新篠津村はそろって2%以上のマイナスだ。札幌に比較的近くにあっても札幌でなければ人口は減っている。札幌から近いから尚のこと減っているのかも知れない。

 14支庁の支庁所在地(現在は振興局所在地と言うらしいが)のうち、マイナス1.5%以上の増加率になっている場所は胆振(室蘭市)、空知(岩見沢市)、留萌(留萌市)、宗谷(稚内市)、根室(根室市)と札幌から比較的近い場所か典型的な僻地のどちらかだ。支庁所在地ではないが札幌の近くにある小樽も同じくらいのマイナス増加率だった。何かこのあたりの共通項もあるのかも知れない。

 その一方で札幌の近くでありながら江別、千歳、恵庭、北広島などは札幌のベッドタウンとなっているのか、増加率はマイナスだが1%未満だ。小樽は札幌からはちょっと行きづらいのか、それとも観光中心で住みづらいのか、増加率はマイナス1.5%を下回る。以前経済破綻した夕張も増加率はマイナス4%以下と最も低い。

 札幌付近の市町村は札幌からのアクセスがカギを握っているように思える。つまり住んでいる場所はそれぞれの市町村だが働く場所は札幌という人が多いのだろう。

 僕が北海道によく行っていた頃、北海道には218市町村あった(よく212と言うが、それは北方領土の6村を除外した数だ。)それが現在では185市町村に減っている。これは平成の大合併で一部の町村が近隣の市に併合されたり、町村同士が合併したりした結果で、自然消滅をしたものはないのだが、実情は自然消滅に近いくらい地方自治体としては成立しないほどに痩せ衰えた場所もあることだろう。

 前回も書いたがタダでさえ人口は少ないのに面積は広いこれらの町村が合併し、行政窓口が減ってしまったり、出張所はあっても従来通りのサービスが受けられないなどといった合併前から分かっていた問題が実際に起こっているのではないかと思われる。利便性を求めて若者は真っ先に地方から離れていく。離れようのない高齢者はこれまで以上の不便を強いられ、ある者は札幌とまではいかないが近くの大きな市町村へと、また子供が札幌や本州にいればそちらに、そしてまたある者は寿命を全うしていなくなってしまう。人がいなくなる要素はいくらでもあるが、そこに人がやって来る要素はない、子供が生まれるわけでもない、わざわざそのような不便な場所に移り住む物好きも少ない、そういった人がいたとしてもすでに生活が成り立たないような場所はさすがに敬遠される。どこへ移動するのにも車が必要となり、車の運転ができない人は生活もままならない。たとえ車で移動をするような生活を送るにしても北海道はガソリンの料金が本州に較べても割高だし、第一ガソリンスタンドもなくなってしまっては車を動かすこともできない。一回の給油のために数十キロも移動をしなければならないなどという場所は珍しくもない。
 
 要するに基本的な行政サービスもろくに受けられないのだ。そんな状態でどうしてそれ以上のサービスが受けられるのだろうか、鉄道は衰退し廃止され、代替交通手段も割高になる、割高なだけならまだいい。そんな交通機関も廃止になってしまう場所だってある。冬になれば雪が移動の邪魔にもなる。

 これだけのことだって道外の自分でも容易に思いつくくらいに北海道の末端での生活は困窮している。北海道が確実に凋落する要素はだいぶ昔から分かっていたことだ。その頃から対策を講じていればというのは前回も行ったことだが、本当にこうしてやせ細っていく現状を目の当たりにする前にどうにかならなかったのかなと思う。

 夕張市が経済破綻をしてかなり久しくなるが、夕張市は石炭が主要な産業だった頃からこの先をどうするか考えていたのではないだろうか、それでメロンを作ってみたり、観光に力を入れてみたりとあれこれと試行錯誤し結局効果がなく経済は破綻した。もしかしたらやり方一つでどうにかなっていたのではと考えると夕張はその将来がその頃から容易に想像できていて、そうならないようにいろいろと頑張ってきたのではないかと思われる。今となっては経済破綻してしまったが、それを他の市町村は「夕張は失敗した町」などと言えるのだろうか、結果はどうであれまずは何かをやってみただけでも他の市町村とは明らかに違うのではないだろうか、最近になってそう思うのだ。これからは何もしなかった組からも経済破綻する市町村がきっと現れるだろう、そんな時代は遠からず来るのではないかと思う■

【稿を改めて資料の具体的紹介をします】

by fibich | 2016-03-30 12:07 | 日常の話

詩と写真の日記

by 遊羽(なめタン)
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