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幻想と日常 ~La Fantazio kaj la Kvotidiano

【詩】『百合』

夏の日差し まだきつい頃
住宅地の急な斜面に
白い百合がたくさん咲いていました
高い場所で急すぎる斜面なので
誰の手も届かない場所
おびただしい数の百合の花が
真夏の熱い風に吹かれながら
ゆっくりと揺れていました
斜面には萩もありましたが
まだ花が咲く時期ではありませんでした
百合が揺れる斜面の上
一戸建ての家が建ち並び
さらにその上
青い空に入道雲が浮かんでいました
暑い夏のじりじりと焦げそうな日差しの下
涼しそうに
百合の花が咲き並び
それぞれが歌でも歌っているかのように
風だけがその場所に行き着いては
百合の花を揺らしていました
一緒になって
萩の枝も小柄な葉を纏いながら
静かに揺れていました
耳に届いてくる音は
そろそろ夏の終わりを告げる
ツクツクホウシの鳴き声と
まだ夏は終わらないとがんばり続ける
ミンミンゼミの鳴き声ばかり
我関せずと白い百合たちは
急な斜面の上
咲き誇っていました
その様子があまりに見事で
僕はいつでも
下から見上げるばかり
やがて時が過ぎ
百合たちは一つ一つしおれて
いつぞやの権勢は
もう夏の熱い風に如く
時とゝもに過ぎ去っていきました
未だ枯れず残っている花が
とても悲しく感じられます
それでも夏の日差しは徐々に弱まりつゝも
容赦なく白い花を照らし続けます
暑い夏の終わりの
一枚のしおりのような風景が
日に日に色あせていくように感じられます
やがて萩に花が咲く頃
この斜面じゅうに百合が咲いていたことを
誰もが忘れてしまうことでしょう
代わりに萩の花が涼しげに
風に揺られていることでしょう


by fibich | 2005-09-03 00:40 | | Comments(0)

詩と写真の日記

by 遊羽(なめタン)
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