2014年 11月 18日
エルバン
このところ安い万年筆が人気だという話をどこかで聞いたことがある。廉価万年筆とも呼ばれるジャンル、昔もセーラーから出ていて百均でも買えるものがあった。最近だとパイロットのペチット、そして今同じパイロットからカクノという千円万年筆が発売されている。
昔から女性には理解できない大人の男の三大コレクションってのがあってナイフとライターと筆記具だという。これらにハマると一生抜け出すことができない奥の深い趣味だ。
今回はこの筆記具の話、最近パソコンだのスマホでばかりものを書いている世の男性で万年筆に興味を持つ者も減ったのではないかとも思われる。しかし万年筆愛好家はこうした廉価万年筆を通して全く異なる世代で流行りだしている。なんとペリカンまでが子供用だがかなり評価の高い廉価万年筆を売り出しているのだ。こうなるときっと近いうちにモンブランやウォーターマンも子供用廉価万年筆を作り出すに違いないと都合の良い事を期待し始めている。
ここまで書くと今日の話は万年筆だろうと誰もが思うのだがそうではない。
ご多分に漏れず僕もこれまでウォーターマン、ペリカン、セーラーといくつも万年筆を愛用しており、今現在はラミーを愛用している。万年筆のカートリッジさえ交換すれば使い続けられるところに魅力を感じるのだが、つい先日万年筆のようにインクカートリッジを交換して使うボールペンなるものを発見。しかもカートリッジは万年筆用のインクである。
それはフランスのエルバンというメーカーのボールペンで、その時はよほど買おうかなとも思ったがぐっと買いたくなる衝動を抑えで店を立ち去った(と言うよりは愛用ラミーのカートリッジを買って帰った)。しかしその後も気になってインターネットなどで調べてみる。
エルバンというメーカーは18世紀の創業という筆記具メーカーの老舗中の老舗。封書を封印するシーリングワックスや羽根ペンなどのメーカーで現在でも羽根ペンやガラスペンなどと言った所謂「つけペン」を作り続けている。もうこれだけでもクラクラする。当然インクも昔から作り続けていて、ナポレオンもこのメーカーに指定色のインクを作らせていたらしい。
老舗の新製品、しかも画期的なアイデアとなれば別に筆記具マニアでなくても試してみたくなるのが心情。さらに最近になって廉価万年筆まで製造を始めたと言うのだからもうここでノックアウトだ。愛用ラミーももちろん可愛いが、ここはひとつ老舗の新製品を試してみたくなった。
そうと決まればフットワークも軽快になる。最初にエルバンを見かけたお店に早速行ってみるも、すでにお目当ての品は売り切れ。首都圏でエルバンを取り扱う店をネットで探し数件当たってみたがどこも品切れでなかった。代わりに羽根ペンやシーリングワックスなどを見ることができたがそれこそ持っていても仕方ないのでひたすら探し続け、やっと探し当てて手に入れることができた。
◆エルバン万年筆(上)スケルトンボールペン(中)ボールペン(下)とインクカートリッジ
こうしてやっと手に入れたエルバンのペンを目の前にしてああ自分にもたまには物慾が戻ってきたと複雑な気持ちでいる。あまり頻繁には戻って来て欲しくはないが、物欲に乏しい日々は味気ないものでもある。
このペンは明日から職場でのヘビーデューティについてもらうことにする。特にスケルトンのボールペンは赤いカートリッジを装填したので採点専用で時として一日かそこらでボールペン丸々一本消費してしまう激務に臨んでもらうこととなるだろう。
老舗の新製品だからと言って人に見せびらかすつもりもない。さりげなく使って気づいた人だけが気づけばそれでいい。筆記具なんてものは人に見せるためのものではなく、物を書くための道具なのだから■
by fibich
| 2014-11-18 23:34
| 日常の話