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幻想と日常 ~La Fantazio kaj la Kvotidiano

四国遍路日記 2014正月 三日目(2)

2014年1月2日(木)

【第三十五番札所 醫王山清瀧寺】

 三十四番種間寺を出てしばらく西に進むと土佐市に入る。道路はバイパスに通じているので比較的新しい町に見えてしまうが、このバイパスからちょっと外れたところに次の三十五番清瀧寺に向かう道が続いている。その道に入って案内通りに進むと泣きが入りそうなくらいの細くてくねくねとした道がみかん畑の中続いていた。車一台がやっとの道で反対側からの離合も儘ならず、何度となくバックをしたり左に寄ったりと苦労をする。普段この道にはこれほどの車は来ないのだがそこは正月なのだろう。

 この狭い道の終点に三十五番の清瀧寺がある。普段はそれほどの人出もないこのお寺、正月と言うこともあって人も多かった。それは遍路姿でない人の数の方が多かったことでもわかる。地元の初詣スポットでもあるのだ。さらにもう一つにはこのお寺にある大きな観音像の戒壇巡りができるというのもあるのかも知れない。
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 このお寺はわんこOK。さすがに胎内巡りには連れて行けないので車の中でおとなしくしてもらっていたがそれ以外では守るべきルールをしっかり守ればわんこはお咎めなしだ。

 この戒壇巡りというのはもちろん初めてだったが中に入るとまったく暗くて何も見えない。善光寺の戒壇巡りとよく似ている。しかしこちらは狭い上に最初はひたすら下っていく。底まで来たなと思うと今度は上って元の場所に出てくる。

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ボクらをほっといて楽しいところに行ってたでちか。
最近そないな事ばかりやねん。うちら待ちぼうけばかりや。


 さすがに延々と坂を上り続けたこともありこのお寺からの眺めもまた素晴らしい。眼下に土佐市の町並みがハッキリと見える。納経所の横から見るのが一番ハッキリと見えるのだろう。この場所には休憩するためのベンチや展望台などもある。

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◆展望台で記念撮影

 ところで、知る人は知ることだがこの清瀧寺には消防車が常駐している。これが常駐している消防車なのかそれとも何かの理由でここに消防車が置いてあるのかわからないが、ここまで来る道のりを考えるとおそらくは前者なのだろうと思う。写真は過去のものならあるが今回はナシ。もう一つこのお寺の特徴に手水場の水がある。この水が冷たくて美味しい。冬場ではあまりその恩恵にはあずかれないが、前回は真夏に来たのでその際はわんこの強制冷却にも役立たせていただいた。

 さて、帰りはどうしようかと迷って車に乗り込むとすでに下から車の行列が並んでいてまったく動く事ができなかった。その時にお寺の人にこちらからでも下りられますよと言われて反対側に通された。このお寺に続く道はお寺が終点ではなかったのだ。しかしここもまた泣きが入るくらいの狭い道で、さらには場所によっては切り返さないと曲がれない場所もあった。しかも対向車が来たらもう一巻の終わりというような場所で麓に下りるまでは心臓がドキドキしていた。おそらくバイクでは相当難儀をすると思う。
 
 麓まで下りると市街のスリーエフに入り先日同様爆弾おにぎりを買って再び移動再開。次の札所までは少し距離があるので食べながら移動をした。


【第三十六番札所 独鈷山青龍寺】

 三十六番札所の名前は三十五番札所の名前からさんずいをはずしたものである。冗談でなくてそうだ。三十五番は「清瀧寺」、そして三十六番は「青龍寺」である。これはたまたまの偶然だろうがそうなのだ。この青龍寺は清瀧寺に向かうときに通った国道56号線バイパスをちょっと戻り、途中を宇佐方面に右折する。道路標識などで確認できるので迷うことはないと思う。しばらく進むと長いトンネルがあり、トンネルを出ると下り坂の途中にスリーエフがある。その先しばらく走ると海沿いの宇佐という所に出てそこを右折、ちょっと進むと宇佐大橋が見えて来るのでそれを渡ってしばらく走ると案内が出るのでそれに従えばたどり着ける。

 最初に書いておくがこのお寺はわんこNGの寺だ。長い石段の手前に聖域に着きペット入場ご遠慮くださいという旨の看板が出ている。そんなわけでわんこは車の中でお留守番だ。

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◆そんなわけで最初に記念撮影だけ

え~さっきも車の中だったのにまたでちか。
 
 と不満たらたらなわんこを車に残して石段を登り始める。ここの石段はとにかく長くてつらい。以前二十五番札所津照寺の石段も紹介したが、長さとしてはいい勝負かも知れない。しかしここは津照寺と違って石段も険しくはないしすり減ってもいない。そのうえ鬱蒼とした木々の中の石段なので疲れも感じない。特に夏場はその違いがわかる。

 石段を登り切ると正面に本堂が見え、階段脇に手水場がある。丁寧にお参りを済ませると石段を下りる。能挙序は石段の下にある。この納経所もまた古い佇まいをそのままに残した味のある納経所だ。
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◆三十六番青龍寺本堂 本尊は波切動明王
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◆本堂の前には西国三十三カ所の観音像もあった

 前回このお寺をブログで書いたときも書いたが、元横綱の朝青龍はこのお寺から「青龍」という四股名を思いついたらしい、モンゴルから明徳義塾高校に入学し、この石段でトレーニングをした事を恩に感じてとのことらしい。らしいらしいというのはお寺側からは朝青龍との縁については何のコメントもないからだ。また朝青龍の下の名は「明徳(あきのり)」といい、これは母校の明徳義塾高校からもらったという話もある。

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◆こちらがその石段。途中から撮影して全長はこの倍くらい

 しかし朝青龍なんてのは結局時の人でしかない、そしてこのお寺はこれからもずっと後の世まで札所として残り続けていく上ではそんな人物との関わりなどはどうでもいいことなのだろう。青龍寺というのはもとは中国にあるお寺で、このお寺はそれを模して作られたという話だ。わんこNGではあるが僕は初めてこのお寺に来たときからこの涼しげな石段の印象が強くて好きな寺の一つでもある。(その日は須崎で37℃の猛暑記録が出た日でもあった)


【第三十七番札所 藤井山岩本寺】

 三十六番青龍寺を打ち終えたのがだいたい3時半くらい、以前だったら次の岩本寺に5時までなど到底無理な話なのだが今回はそうでもなかった。というのは高知道が今は窪川までつながっているのだ。以前だったら横浪スカイラインを須崎まで走り、須崎からさらに久礼坂峠を越えてと数時間コースだった。早速寺を出ると須崎方面ではなく元来た道を宇佐、土佐まで戻りそこから高知道に入って一気に窪川まで向かうルートを選ぶ。

 徳島の美波町を日和佐と旧名で呼ぶように、僕は未だに窪川という旧名を使う。現在名は四万十町である。もちろん四万十川から来た地名なのだろう。美波という名前よりはずっといいと思うのだが実は高知には四万十町と四万十市の二つの四万十があるのだ。それも互いに50キロほど離れている。紛らわしいから四万十町は窪川、四万十市は中村と呼んでいる。こう呼んでいる人はおそらく高知の人でも多くいるのではないかと思う。だってやっぱり同名は混乱を招くだけだ。もう少し地域の人間は考えて新たな名前が決められなかったのかなと思う。片方が四万十町ならもう片方は中村のままでもいいと思うし、幡多郡の「幡多」を使っても良かったのに。逆もまたしかり。

 そんなわけで三十六番青龍寺から現四万十町の窪川までなんと一時間ちょっとで行くことができた。高知道のこの新たに伸びた区間は本当に助かっている。なんとか時間ギリギリで三十七番岩本寺にたどり着いた。二日前テレビで見たお寺はその時の喧噪はウソのよう。僕とママとわんこ三頭しかいなかった。後に数人やって来て最後の人は納経時間後に来て納経所でひともめしていた。

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◆三十七番岩本寺山門

 このお寺はわんこOK。山門を入ると右奥に本堂がある。本堂手前の右側に大師堂があり、納経所は山門を入ってすぐ左にある。このお寺は宿坊もあり本堂の真向かいに位置している。

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◆鐘楼の石段で記念撮影


 このお寺の特徴は本尊が5つあること。5つあるのでお参りの時に唱える真言も5つ言わなければいけない。本尊は不動明王、聖観世音菩薩、地蔵菩薩、阿弥陀如来、薬師如来の5つだ。何故5つあるのかというのはまた語るとこのブログがつまらなくなるので手短に書く。

 四国札所三十七番は昔高岡神社という神社だった。この高岡郡にあった鎮守社に弘法が円満福寺という寺を建て、神社を5つに分社。ここから神仏習合の寺ができ、5つに分社された神社の神が本地仏となり明治時代の神仏分離によって神社と寺が分かれた。その後廃仏毀釈でお寺は取りつぶしになり二十年後に復興。それまでの間高岡神社が札所になり、復興した岩本寺に本地仏が移された…と、結局ややこしい話。この本地仏というものの原因は神社とお寺が一緒くたに考えられていた時代の産物、日本の八百万の神々ももとをたどれば仏だということで仏にされてしまった神様のことを本地仏といい、神仏習合の習慣で神もまた仏になるとするその考えを本地垂迹(ほんじすいじゃく)と言う。そんなわけで岩本寺は5つの本尊がある。

 つまらない話はここまでにして岩本寺のもう一つの特徴は本尊の天井絵だ。本尊に入ったら忘れずに天井絵をみなければこのお寺に来た意味がない。およそお寺の本尊とは思えぬ絵がいくつもある。シャガールの絵だったりルノワールの絵だったり、そして一番目立つところにはマリリン・モンローがいる。こんな茶目っ気たっぷりな本尊の天井絵は一見の価値がある。
 
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◆こちらその天井絵のモンロー

 納経所の横でお守りを売っていて、見たことのないペットお守りがあったのでわんこにお守りを買った。今現在でもそのお守りを使っている。神社やお寺で見かけるペットお守りはそれぞれの寺や神社の名前は書いてあってもモノは同じと言うことが多いが、このお寺で見たお守りは初めてだった。

 お参りを終えるとホッとするまもなく宿のある中村まで急ぐことになる。距離はざっと50キロほど。そしてこの窪川の町はずれには「水車亭(みずくるまや)」という和菓子屋があり、県内では塩けんぴで有名。ここで塩けんぴやその他お土産を調達しておいた。寄れる時に寄らないと次は来られないことの多いのが遍路旅。自然とこういった習慣がついていた。

 中村ではすでに定宿になりつつある「旅館福田屋」でお世話になる。ここはなんと言っても食事が素晴らしい。この食事と女将さんに会うためにこの宿を選んだようなものだ。またこの一帯ではだいたいわんこOKの宿というと足摺岬に集中しているが中村でわんこOKというのはここだけでそれだけでもありがたい。

 夕飯を済ませると長距離移動の疲れもあってさっさと寝てしまった。翌日もまたかなりの長距離移動がある。中村という場所が遍路旅においてとにかく重要な場所なのはまた次の回にでも書くことにする■

by fibich | 2014-04-21 00:29 | 旅の話

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by 遊羽(なめタン)
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