ブログトップ | ログイン

幻想と日常 ~La Fantazio kaj la Kvotidiano

三陸の思い出(7)

岩手県宮古市の中の浜キャンプ場で住み込みで働いていたのが1987年の夏。
この年の夏、東北地方は梅雨明けがいつだったか定かではない。

この年は全国的に梅雨明けが遅くなり、関東地方でも7月後半くらいにやっと梅雨が明けた。
東北地方ともなるともういつ梅雨明けしたのかがわからない程度。働き始めた7月は時折
雨が降る中でも働いた。土砂降りの中を夜中にキャンプ場巡回をしたこともあった。

宮古の一帯では夏に海霧が発生し、冷たい風と一緒に陸地に吹いてくる
ちょっと強めのオンショアの風が霧を運んでくる。地元ではこれを「やませ」と呼んでいた。
通常のやませは夏場に山から吹き下ろす冷たい風のことを指すが、海沿い一帯では
おなじ「やませ」でも違うものをさす。

このやませで流れてきた霧が辺り一帯を包み隠すことも何度かあった。一番ひどい時は
キャンプ場の管理棟の中まで靄がかかる状態。外に出ても何も見えないほどの景色は
幻想的ではあるが、同時に気温も下がりストーブをつけることもあった。

この年、気象庁は本当に東北地方の梅雨明け宣言をしなかった。その頃の事を
思い出すと8月上旬に徐々に夏らしい天気になっていったが、中旬も13日くらいから
雨が降り出し、それが数日続いた。これが夏の終わりだったと言っても良いだろう。
なので夏は事実上一週間あったかどうかといった程度である、

それでも夏休みの時期はキャンプ場にも客がたくさんやって来て、隣の女遊戸(おなつぺ)
海水浴場も盛況で売り上げも伸び、売店で働いていた高校生連中だけでは手が足りなく
なってヘルプにかり出される事もあった。

短くてあっという間だった宮古の夏、女遊戸の集落の蛍もいつしか姿を消し、
夜は吐く息が白くなることもあった。

つづく
by fibich | 2011-04-24 21:41 | 旅の話

詩と写真の日記

by 遊羽(なめタン)
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31