登山家の摂理は
そこに山が存在するから
なぜ山に登るのか
そこに山があるからだと人は言う

僕が人に与えたくなるのは
僕が人を傷つけたくなるのは
僕が人を誉めたくなるのは
僕が人に教えたくなるのは
僕が人を誇りに感じたくなるのは
僕が人を慈しみたくなるのは
僕が人を殺したくなるのは
僕が人を殴りたくなるのは
僕が人とつながりを求めたくなるのは
僕が人と別れたくなるのは
僕が人に歌いたくなるのは
僕が人の目を避けたくなるのは
僕が人を好きになるのは
僕が人とゝもに暮らしたくなるのは
僕が人から逃げたくなるのは
僕が人を越えたくなるのは
僕が人を敬いたくなるのは
僕が人を喜ばせたくなるのは
僕が人を笑わせたくなるのは
僕が人をないがしろにしたくなるのは
僕が人に媚を売りたくなるのは
僕が人から学びたくなるのは
僕が人を恨みたくなるのは
僕が人を助けたくなるのは
僕が人を恥じたくなるのは
僕が人へ伝えたくなるのは

そこに人がいるから
僕の目の前に 人がいるから
人と人との繋がりを
一番深く考える瞬間
そこに人がいるから
そして僕がいるから

僕が君を求めるのは
僕が君に言葉を贈るのは
僕が君と一緒にいるのは
僕が君を尊敬するのは
僕が君とともに思い出を作るのは
そして
僕が君を心から愛するのは
君が目の前にいるから
目の前の君を
とてもいとおしく思うから
僕にとって愛するべき
君がいつも そこにいるから
僕の言葉を受け止めて
僕の気持ちを慰めて
僕の前にいつもいる
君が 君がそこにいるから
すぐそこにいるから
僕は君を
愛したくなる

人と人との繋がりが
君と僕との繋がりが
近づくことで深まることで
今日も僕は生きている
君と言う人の目の前で
僕も人間として 生きている


☆即興詩


鋭い空気に引き寄せられて
こゝまで来てはみましたが
花は凍て付いたかのように
色彩を尖らせたまゝ
今にも散ってしまいそう
吐く息が白く踊り
風でも吹けば
この頬は引き裂かれそう
緊張の時が
穏やかすぎるこの場所にも訪れ
落ち着いたはずの雰囲気は
冷やされすぎて
急かされた気分にさえなります

鋭い空気に引き寄せられて
白い空を見上げては
今が最も寒い頃なのかと
考えずにはいられませんでした
北国育ちではない私は
慣れない寒さに縮こまるばかりで
一刻も早く
こゝを去りたいのに
足が思うように動きません
穏やかな景色さえも
悲しみに包まれたように感じる
寒気の無邪気ないたずらに
心が凋んでいくのです


☆即興詩

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誰でもいつかは
帰る場所があるのなら
ここには誰が
帰ってくるのだろう
a0004070_237.jpg小笠原

東洋のガラパゴスとも呼ばれる絶海の孤島。東京から船に乗って25時間半、唯一の交通手段がそれだけなのである。沖縄へ行った、新島へ行った、そんな人は多いと思うがさすがに小笠原へ行ったという人は少ない。それだけに小笠原は訪れた人の心を掴んで離さないのである。

沖縄のように独自の文化や音楽があるでもない、それでも沖縄に負けず劣らずの美しい海はとにかく忘れがたい。そして何よりも南の島にしては非常に落ち着いていること、これもまた小笠原の魅力だ。思うに新島へは簡単に行けても小笠原まではなかなか行けない、旅費もかかれば時間もかかる、ここまで来られる人はそれなりに根性も入っているのか、ガキっぽい連中は比較的少ないとも思える。

小笠原の玄関口は父島だが、ここからさらに船で2時間の所に母島がある。母島こそ本当に小笠原らしい場所と言っても良いだろう。島内に集落は一つしかなく、手つかずの自然が残っている。

青い海、強い太陽。沖に出て鯨を見たりイルカと泳いだりといろんな思い出があるのだが、何よりも小笠原全体に流れる時間がゆったりしていること、東京都内にこんな楽園があるのには驚きである。

海沿いにあったあばら屋でマーティン・デニーを聞きながら詩を書いていた。強い日差しの中へと一歩も出られず、ただ眼下に煌めく海を眺めながら詩を書いていた母島の午前9時、これから遊びに出るか、それともここで詩を書き続けるか、それとも詩を書くのはやめて一泳ぎしようか、強烈な日差しから逃げながら眺めていた眩しすぎる風景。時間の流れ方が違うから、それだけ余計に一日を楽しめた。

 
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ハヤチネウスユキソウ

七月終わりに
早池峰に登った思い出は
その時山頂に咲いていた
白い花が揺れるように

時に強く
時に優しく
風に吹かれるかのように
蘇ってきます

麓の街にもやっと
夏らしい風が吹き
水車が忙しげに回り出す頃

思い出しておくれ
早池峰に登った
あの仲間たちよ


☆即興ソネット
PHOTO:早池峰山の頂上から