ブログトップ | ログイン

幻想と日常 ~La Fantazio kaj la Kvotidiano

遍路日記2007(31)

8月6日(六日目) 五十一番石手寺~道後温泉

四十八番以降W650に乗った長澤さんと行動を共にし、五十一番の石手寺に到着。門前のちょっと空いている場所にバイクを駐めて山門へ向かった。この時時計はすでに四時半を過ぎていてちょっと急げば納経所が閉まる前に寺を打つことはできそうだった。

遍路日記2007(31)_a0004070_2072010.jpg
五十一番石手寺の三重の塔


五十一番石手寺、衛門三郎の生まれ変わりが手に石を持って生まれてきたところからこの名前がついたという謂われがある。道後温泉からも近く松山のお大師様と呼ばれて親しまれ、正月には松山や周辺の人たちが大勢訪れる寺でもある。山門の正面に金剛杵のモニュメントがある。本尊は薬師如来。そしてその右手奥には大師堂がある。この寺は本堂もさることながら三重の塔が立派だ。

僕もこの寺は好きで、今年の初詣にもわざわざここまでやって来たくらいでもある。とは言ってもその時はまだ以前の仕事をしていたときで、正月は四日から仕事始め、そして七日で仕事を終えてちょっとした連休があったのでここまで来たのだった。

遍路日記2007(31)_a0004070_2051956.jpg
五十一番札所石手寺本堂


納経所で御朱印をいただくともういい時間。今日はここで打ち止め。門前の商店もいつのまにか店を閉め、その中で焼餅を売っている茶屋だけがまだ開いていたのでここで長澤さんとあれこれと話し込む。さらに焼餅までご馳走になってしまう。長澤さんのバイク好きの話しから転職をして今に至る話。そして五十代(長澤さんは五十代)ともなると事の結果が見え始めるといった話までいろいろと聞かせてもらった。

遍路日記2007(31)_a0004070_2082966.jpg
石手寺の門前



たまたま同じ時期に四国に来て、遍路として旅をする間に知り合い、いつしか行動を共にする。これが一期一会というものなのだなと実感する。

石手寺を出ると道後温泉はもうすぐそこ。境内を背に右手に曲がって長い坂を下れば道後温泉駅正面に出てくる。ここで長澤さんとは別れて予約した宿に向かった。松山に来るといつも道後温泉本館横にあるホテルに泊まる。このホテルはネットで予約すると格安で泊まれるのだ。それも楽天などのサービスではなく直接このホテルのHPにアクセスし、そこから予約をすればの話。千円以上も安くなるのでこれは大きい。そして何よりもロケーションが最高である。ホテルの浴衣を着てそのまま道後温泉本館まで歩いて30秒もかからない。

遍路旅最高の楽しみの一つがこの道後温泉である。自前の甚平に着替えると早速本館までホテルの雪駄を履いて歩いていった。この日は本館脇に特設ステージが設けられ、そこでイベントも行われていた。なんとも雰囲気のいい歌が流れていて旅をしているなと言うリアリティが伝わってくる。

この歌、歌詞の一部を彼女にメールするとその日のうちに調べてくれた。新井満の「この街で」という歌で、松山の為に作られたような歌。「恋をして結婚し、母となったこの街でおばあちゃんになりたい。」という松山出身の詩人のわりと有名な件に新井氏が感化されて作った歌らしい。

道後温泉に行くといつも一番値段の高い「霊(たま)の湯三階個室」に入る。今回は空き部屋があったので早速部屋を押さえた。霊の湯は泉質も良く、値段も高いのだが滅多に道後に来ることもないので個室をおさえる。80分利用できて1500円と確かに高い。そして個室はいつでも3号室。これで4回目なのだが4回とも3号室だ。この3号室は斜め向かいに「坊っちゃんの間」という部屋があって見学が可能だ。夏目漱石がよく使っていた部屋だとのこと。

じっくり温泉につかって遍路旅の疲れを取るとあとは部屋でごろんと横になってのんびりするのが好きである。古い道後温泉本館にエアコンなんてものはないが、扇風機だけでも十分涼しく過ごせる。

道後温泉本館の次はもう一つの楽しみである行きつけの店がある。電停の警察署前正面にある「元気いちばん亭」というラーメン屋の担々麺が好きで、松山に来るとこの担々麺しか食べない。甚平に雪駄の出で立ちでそのまま市電に乗り、警察署前まで行く。ところがだ、これまで暖かく僕を迎えてくれた。それこそ今年の正月もちゃんとあったはずの店がいつの間にか更地になっていた。これはショックだった。

担々麺がダメなら松山駅のじゃこ天でも食べよう(これも美味しい)と思って市電で松山駅まで行ったのだが、すでに閉店になっていた。松山の楽しみが一つなくなり途方に暮れていたのだが、夕食がまだだったので駅にある洋食屋に入って夕食をすませる。適当に美味しい店だったのがまだ救いだっただろう。遅い時間、店には僕と外人の夫婦しかおらず、店のオバチャンが臆することなく英語で話しかけているのを見てとってもカッコ良く見えたものである。

食事を終えて道後温泉に戻ろうとするも、すでに市電は最終電車が出た後だった。恐るべし松山。市電の最終は10時だ。10時はあまりにも早くはないかとも思うのだが、そこは健全な都市。似たような電車が走る三軒茶屋とは大違いなのだ。

帰る手だてもなくなり仕方なくタクシーで道後温泉駅まで戻る。コンビニで買い物をしてホテルに戻ると波のようにだんだんと眠気がやって来てそのまま眠ってしまった。■

つづく
by fibich | 2007-10-10 20:09 | ライダー日記

詩と写真の日記

by 遊羽(なめタン)
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31