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幻想と日常 ~La Fantazio kaj la Kvotidiano

【詩】『石』

【詩】『石』_a0004070_23319.jpg ある日気がつけば
身体の一部が石になっていた
固くて冷たく
それがもともと何だったのか
思い出すこともできず
だんだんと広がる
石化の恐怖 渦巻く諦念
恐ろしいほどの
忍び寄る沈静
さすれば石
感覚も温度も
かつての何とも思い出せぬ
石になっていく

最後の抵抗は蟷螂の斧の如く
為す術もなく石は
次々と雑念を払いのけ
頭の中はもはや
どの回路を辿っても
同じ終結を目標点にする

中学時代使ったきりのコンパスで
石に文字を彫る
一日の書蔑ろにして
もはや口の中は
イバラのゝびる場所もなく
コンパスの新しい使い方を知った夜
もう一カ所
石を見つける

このまま石になっていく様を
自分の記憶に照らし続けていくのなら
恐怖も何もかも感じない
完全な石になることを
一日でも早くと望むだけ
それでも石の広がりはわがまゝで
成長してはある程度で止まっていく
石化した部分のかつては何であったかなど
もはや思い出しても
これまた意味のないこと
こうして新しく覚えたコンパスの利用法で
次に彫る文字などを
暢気に考えるゆとりさえできた

最後の抵抗だった石に刻まれた文字は
きっと僕が完全に石になっても
消えないで残る
消えないで消えないで
そこに僕がいたと 証明してくれる
石の恐怖に打ちひしがれつゝ
今日またいつ止まるとも知れぬ思考の全てゞ
言葉を考える


PHOTO:ベルリン

by fibich | 2004-03-10 02:34 |

詩と写真の日記

by 遊羽(なめタン)
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