遍路日記(23)

八月十一日 五十四番札所延命寺~五十八番札所仙遊寺

目覚めるとすでに5時半になっていた。ホテルに宿泊するととにかく泥のように眠ってしまい寝坊をしがちだ。荷物をパッキングしていると隣の道後温泉本館から朝6時の一番太鼓が鳴り響いていた。道後温泉本館は朝6時から営業を始める。せっかく松山に来たのだからもう一度風呂に入ろうかなとふと考えてしまったのだがそこは不慳貪(ふけんどん、欲張ってはいけない)という戒めがあるため金剛杖を背負ってホテルを後にした。

五十四番延命寺は今治にあり、その後も今治市内の寺を打つ。今治までは海沿いの国道196号線を走るのだが、朝の時間帯この道路は2車線区間でものすごくペースが上がる。また東へ向かうため朝日がとても眩しくて眠気を感じてしまうほどである。

今治市内に入ったときにはすでに眠気でフラフラ。まだひとつも寺を打たぬ前から睡魔に襲われる始末。やがて案内標識が出てくると道路を左に逸れ、細い路地を通って延命寺まで着く。駐車場は山門の先で、バイクを止めると一度山門の外まで出てくぐり直す。本堂はすぐに見えるも、大師堂は階段を上がった先にあり朝から汗ぐっしょりになってしまった。

続く五十五番札所南光坊は今治市内のど真ん中。駐車場は境内の中にあり感じとしては十七番札所の井戸寺によく似ていた。駐車場がちょうど境内の中心で、本堂と大師堂はそれぞれ反対方向にある。境内はそれほど広くはなく、山門前の国道は朝の時間帯で車の行き来が多かった。ここでは昨日も何度か見かけた無愛想なバイク遍路さんがやって来た。やっぱり前日は松山に泊まったものとみられる。相変わらず手近にあるお堂だけお参りをするとすぐに納経所へ向かっていた。そのため僕より後に来て、僕よりも先に寺を後にする。

今治市内は案内標識も比較的多く、ツーリングマップでルートを確認しておけば道に迷わずにお参りをする事もできる。前回今治に来たときは駅前しか見なかったため今治という街をじっくりと走るのは今回が初めて。五十六番札所泰山寺はそんな今治の街からちょっとはずれた田んぼのど真ん中。僕より先に南光坊を出たはずのバイク遍路さんは僕が泰山寺に着いたときにはまだ来ていなかった。南光坊を出たあたりから再び腹具合が悪くなり、泰山寺では山門をくぐると本堂ではなくトイレに直行。なんとも情けない。

トイレから出てくると境内には先ほどのバイク遍路さんがやって来ていた。朝の寺、お参りをする人などほとんどおらず僕とそのバイク遍路さんの二人だけだ。ここで彼は僕の姿を見つけると…
「よく迷わずに来られましたね。」
と初めて声をかけてきた。聞けばこのお遍路さん、河内からやって来たらしく以前にも八十八カ所を打った事がある言うなればお先達様なのである。お先達なのにお参りの仕方は滅茶苦茶だなと思ったが、彼は彼なりの事情があるのだろうなと思って深くは考えない事にした。それよりも以前に来ているはずなのに南光坊を出た後今治市内で迷子になったらしく、難儀していたらしい。
「前にも来ているはずなのに、伊予は不案内でやっぱり迷っちゃったよ。」と照れくさそうに言っていた。

バイク先達はいつも通り僕よりも先に出た。僕は次のルートを確認してから出発。次の五十七番栄福寺へと向かった。泰山寺から栄福寺までは3キロほどしか離れていなかった。すでに来ているだろうと思っていたバイク先達は僕が栄福寺に着いたときには姿が見えなかった。すでにさらに先に行ってしまったか、また迷っているんだなと思って僕は僕のペースでお参りをする。栄福寺は駐車場のすぐ脇に鐘楼があり、水場はその先になる。寺そのものはそれほど広くはなくお参りしやすい寺だった。

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五十七番札所栄福寺


栄福寺から仙遊寺はさらに近い。すっかり人里離れた場所まで走ってきたなと思うような場所にあり、山門は坂の下。駐車場は山門の横を通り本堂のすぐ隣にある。仙遊寺には宿坊があり、宿坊には温泉もあるらしい。貧乏遍路にとっては宿坊などというものは縁遠いのだが、このお寺の宿坊だったら泊まってみたいなと思うような静かな佇まいの寺だった。

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五十八番札所仙遊寺


お参りを済ませると先ほどのバイク先達さんがやって来た。やっぱり道に迷ったみたいで目が合うと照れくさそうに笑っていた。ここまでの間どうやったら迷うのだろうと思っていたのだが、僕も次の五十九番札所国分寺に向かう途中は迷子になってしまった。往々にして土佐と伊予は不案内であると他のお遍路さんも言っていたが、今になって思えばその通りなのかも知れない。

  つづく
by fibich | 2006-09-17 23:58 | ライダー日記 | Comments(0)