2004年 06月 06日
【詩】『林檎の花』
林檎の花が咲いてる
暖かいところなら
何処へでも行く
この歌を歌ったシンガー 村下孝三は
数年前若くして
この世を去ってしまった
佳人薄命と人は言う
僕も彼のことを考えると
本当にそうなんだなと
つくづく思うのです
緩やかな坂道を下ると
とたんに目の前は開け
辺り一面に
林檎の花が咲いていました
北国の遅い春は
他の場所からすでにやって来た
春の便りを意識しすぎて
やがてすぐ暖かくなるにもかかわらず
今すぐにでも
もっと暖かい場所へと
行きたくなってしまう
そんな時期でもあります
遠くの山並みに雪はまだ残り
さえ渡った空にはまだ
燕の姿は見えないけれど
春はそろそろやって来るのだと
林檎の花は
そっと教えてくれました
暖かい場所からやって来た僕は
しばし花盛りの林檎の畑を眺めながら
終わらぬ冬はないのだと
改めて知りました
村下孝三の歌は
時代が変わっても色あせぬ
古くさゝを全く感じない
どこか普遍的なものを
持ち続けています
「踊り子」という歌を聴いて涙した
そんな時代はとうに過ぎ去ってしまっても
未だこの歌は聴くたびに
僕の心を揺すり動かします
それはきっと
日本人なら生まれる前から持ち合わせている
敏感な季節に対する感情と
強く堅く
繋がっているからなのでしょう
by fibich
| 2004-06-06 22:12
| 詩