ブログトップ | ログイン

幻想と日常 ~La Fantazio kaj la Kvotidiano

【詩】『バンドゥルマ旅行団』

【詩】『バンドゥルマ旅行団』_a0004070_1182351.jpg

朝イズミールを出発した列車は冗長な経路を経て
やっとたどり着いた
イスタンブール行きの船は
目の前で出て行ってしまった

震災から立ち直りつゝあるこの街の
船着き場で途方に暮れる
目の前のマルマラ海はねずみ色
埃っぽい街の空もまたねずみ色
船着き場は連絡船に乗り遅れた人で賑わい
まるで旅行団の中にいるよう

坂がちの街並みを歩けば
どれもこれもひげ面の男たちが
チャイハネからじっとこちらを見る
僕は異国の異教徒
町中に響くコーランに身を寄りかゝらせて
どこか居心地の良いカフェでもないか
ゆっくりと坂道を歩く
カモメが飛んでいるあたりのビルは
まだ崩れたまゝ
間に合わせの看板がそのまゝ壁になっていた
不思議の街 バンドゥルマ
ネットカフェには 英語OSの端末もない

船着き場に戻ると さらに増えていた旅行団
どれもこれも イスタンブールへと向かうらしい
マルマラ海のむこうにある大都会へと
にわかに出来上がる旅行団が
ねずみ色の海を眺めている
カモメは相変わらず悠々と
ねずみ色の空を泳いでいる

この街最後のコーランが流れる時
街はすっかり夜に包まれ
忙しい坂道を下って夜の風が降りてくる
ラマダン明けで賑わいを取り戻した
町から海へと 風だけが降りてくる
見知らぬ旅行団に紛れて旅支度をするも
僕はやっぱり
異国の異教徒
闇に紛れてイスタンブールを目指す
異国の異教徒


PHOTO:バンドゥルマ

by fibich | 2005-11-17 01:18 |

詩と写真の日記

by 遊羽(なめタン)
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31