2005年 11月 17日
【詩】『バンドゥルマ旅行団』
朝イズミールを出発した列車は冗長な経路を経て
やっとたどり着いた
イスタンブール行きの船は
目の前で出て行ってしまった
震災から立ち直りつゝあるこの街の
船着き場で途方に暮れる
目の前のマルマラ海はねずみ色
埃っぽい街の空もまたねずみ色
船着き場は連絡船に乗り遅れた人で賑わい
まるで旅行団の中にいるよう
坂がちの街並みを歩けば
どれもこれもひげ面の男たちが
チャイハネからじっとこちらを見る
僕は異国の異教徒
町中に響くコーランに身を寄りかゝらせて
どこか居心地の良いカフェでもないか
ゆっくりと坂道を歩く
カモメが飛んでいるあたりのビルは
まだ崩れたまゝ
間に合わせの看板がそのまゝ壁になっていた
不思議の街 バンドゥルマ
ネットカフェには 英語OSの端末もない
船着き場に戻ると さらに増えていた旅行団
どれもこれも イスタンブールへと向かうらしい
マルマラ海のむこうにある大都会へと
にわかに出来上がる旅行団が
ねずみ色の海を眺めている
カモメは相変わらず悠々と
ねずみ色の空を泳いでいる
この街最後のコーランが流れる時
街はすっかり夜に包まれ
忙しい坂道を下って夜の風が降りてくる
ラマダン明けで賑わいを取り戻した
町から海へと 風だけが降りてくる
見知らぬ旅行団に紛れて旅支度をするも
僕はやっぱり
異国の異教徒
闇に紛れてイスタンブールを目指す
異国の異教徒
by fibich
| 2005-11-17 01:18
| 詩