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幻想と日常 ~La Fantazio kaj la Kvotidiano

遍路日記2015夏 伊予札所紹介②

 遍路日記雑記、伊予札所紹介の二回目は松山市内の札所についてです。こんな話はトリビアでしかありませんが四国の県庁所在地の中で札所が最も多いのが松山市(8ヶ寺)なのである。そんなわけで今回は一挙に8ヶ寺を紹介しましょう。ちなみに他の県庁所在地はどうかというと他はすべて5ヶ寺である。子規や漱石も遍路を詠んだ俳句があるくらいで、松山は四国88か所とも縁が深い。それでは各寺院の涼し気な手水場写真と一緒に札所の紹介を始めましょう。

【札所46番 浄瑠璃寺】
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 場所は松山市南部。三坂峠を越えて松山市内に入ったところにある。境内は鬱蒼と木々が茂り日影が多い。入口の石段を上がり真正面に本堂、その左側に大師堂がある。まだ大師堂の左わきには蓮池もある。入口の石段には正岡子規の句碑も残されていてここはもう松山なんだなと実感する。中に入ると木陰が多く、右手に鐘楼、左側には納経所、その先納経の奥には仏足石、右側には樹齢千年を超え市の天然記念物にもなっている伊吹の巨大な木がある。その奥に本堂、本堂に左側に大師堂があり、大師堂の奥には蓮池もある。


 開基は行基菩薩、本尊は薬師如来で薬師如来がおられる瑠璃光浄土から名前が取られたとも言われている。(ちなみに山号である医王山というのはだいたい薬師如来が本尊の寺だ)。またこのお寺の近辺は遍路の元祖でもある衛門三郎の生地でもある。衛門三郎の話は本編で書いたのでこちらでは省略。

 このお寺は岩屋の登りや御坂峠越えで心身ともに疲弊したところを癒してくれる。そんな存在でもある。この寺と次の札所47番八坂寺はどちらもそんな感じだ。またこのお寺から数えて札所53番圓明寺までは松山八ヶ寺と呼ばれていることからこのお寺は松山市内の入口のような存在でもある。

 入口向かいに遍路宿として有名な長珍屋(ちょうちんや)もあるが、オフシーズンの時には営業しているのかどうかは謎。この長珍屋は昔本当に提灯を作っていたらしい。

【札所47番 八坂寺】
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 46番浄瑠璃寺からはさほど離れていない松山市南部に位置する。坂道沿いに寺があり、正門の位置が坂の下、本堂や大師堂の位置が坂の上にある。文武天皇の勅令で8世紀頃開基した古い寺で11世紀頃は修験道の道場となり10以上のお堂を持ち僧兵を擁した大きな寺だったらしいが、度重なる兵火による消失と復興を繰り返し現在に至る。

  浄瑠璃寺の時にも書いたがこの地方は衛門三郎の出身地ということもあり、何かと衛門三郎にまつわる言い伝えも残っているし、この寺の近くには「衛門三郎の里」という施設もある。

だいたいこのお寺は昼のうちに久万高原の札所を打ち、できるだけ松山市の中心に近い札所まで打ち急ぐ途中にあるが、このお寺で打ち止めになったことも2度ほどある。本尊は阿弥陀如来。

【札所48番 西林寺】
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 開山は行基菩薩。のちに弘法大師がこの地を訪れた時に旱魃で苦しむ人々を救うために錫杖で地面を突いて水を出したといういわれのある杖の渕がすぐ近くにある。杖の淵の水は日本名水100選にも選ばれている。

 聖武天皇の勅令で建立され、のちに弘法大師が錫杖で水を出した杖の渕が奥の院になっている。17世紀に大火で消失したが、18~19世紀にかけて徐々に再建され現在に至っている。

杖の渕の名水が寺のすぐ脇にも流れているし、手水場の水もそうである。印象としては特徴のない典型的な町寺という感じがするが、このお寺はこれまでに2度打ち始めの寺になっているので早朝のすがすがしい印象がほかの寺よりも色濃い。その一方で団体様に襲われたり、納経所の人が呼んでも全然出てこなかったりといろんな思い出が残っている。

 本尊は十一面観世音菩薩。駐車場は道路沿い、納経所の近くにバスでも止められる大きな駐車場がある。

【札所49番 浄土寺】
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 西林寺からさらに松山市街に向けて進み、鷹ノ子駅の横にある踏切を越えて左折したすぐ先にある。ここまで来るとだいぶ町中に入ってきた感じもする。

 この寺は孝謙天皇の勅令で恵明上人が開基し、行基菩薩が刻んだ釈迦如来像を本尊として開山した。空也上人ゆかりの地で、木造空也上人像は国の重要文化財。他にも空也を詠んだ正岡子規の句碑もあるらしいのだが、実はあまりそのことを知らずにまだ見たことがない。

 ごくごく普通の町寺だが本堂も大師堂もなかなか古くて味のあるお寺でもある。松山も近くだいたいは夕方やってくるのでここで宿を探したり、雨が降った時に雨宿りをしたりと思い出もある。山門すぐ前に駐車場があるあたりがどことなく40番の観自在寺にも似ているというのは本編でも書いた。

 本尊は釈迦如来。

【札所50番 繁多寺】
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繁多寺といえば水曜どうでしょうのファンタジーを思い出すのだが、知らない人の方がきっと多いはずだ。山門の前に駐車場があり、そこからまっすぐ本堂に続いている。その間に手水場と鐘楼がある。

このお寺は地元では「畑寺」と呼ばれ、畑寺という地名にもなっている。孝謙天皇の勅令で行基菩薩が本尊の薬師如来を彫り光明寺と称したが後に弘法大師によって寺号を繁多寺とされ、その後衰退と繁栄の歴史を経て現在に至る。源氏や一遍上人とのゆかりもあり、かつては大きな寺であったらしい。

現在では住宅地の真ん中の溜池横にある静かなお寺である。このお寺を打ち終えるといよいよ次は松山のお大師、札所51番石手寺だ。個人的にはここで打ち止めになったこともある。

本尊は薬師如来。

【札所51番 石手寺】
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 弘法によって弔われた衛門三郎の生まれ変わりが石を握っていたことから改名されたお寺。現在は松山のお大師として市民に親しまれている道後温泉からも程近いお寺だ。門前の仲見世にある焼餅は名物。また山門は国宝。

 四国札所の中でもひときわ大きなお寺の一つではあるのだが、このお寺はちょっと物申したがり屋なのか、戦争法案に反対だの(そりゃ国民の過半数は反対しているのだろうが)なんだのと境内にあれこれ書いてあってそれがあまり見た目にいいものではなく、むしろ諄いと書いてしまったほうがいいくらいに目障りだった。ある意味これに似ているのがスピーカーで四六時中御詠歌や寺の縁起を流し続ける8番や81番だろう。

 仲見世の楽しげな雰囲気、焼餅の茶屋などとこのお寺にはいろんな楽しみがあるのだが、中に入るとちょっと興ざめしてしまうのが残念。あれさえなければ納経所のある方丈もとても味があるし、三重塔も重厚感に満ちていて来てよかったと思えるお寺なのに残念だな。

 ご本尊は薬師如来。大師堂には夏目漱石や正岡子規が残した落書きがあるらしい。駐車場は道路沿いの少し離れた所、郵便局の隣にある。

【札所52番 太山寺】
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 車で山門の脇を通過してどんどん進んだ先に納経所が、さらに急坂を登った道の終点に手水場があり、そこから急な石段を登ってようやく本堂の前に到着する。門から入り正面には本堂、左手には大師堂があり、敷地の中心には摩尼という手車がある。これを手で回すと読経をしたことになるらしい。しかし門から先の境内には逃げ場がほとんどなく夏場は要注意。

 この寺の本堂は寺を開基した真野長者が大阪へ商用に出た際に海難に遭いなんとか一命をとりとめたとき、命を救ってくださった観音様の報恩のしるしにと建てたもので。その資材を運び入れて一晩で建てたという言い伝えがある。

 現在の本堂はそれから3代目のもの。これは国宝である。ちなみに愛媛県の国宝はこの寺と51番石手寺の仁王門の二つだけ。ご本尊は十一面観世音菩薩。山門から数えて3つ駐車場があるが、一番本堂に近い駐車場まで行ってお参りするのが一番良い。

【札所53番 圓明寺】
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 松山市のはずれ、北条のほぼ手前にある。境内は狭くて典型的な町寺。このお寺はかつて隠れキリシタンが十字架を模した灯篭を大師堂の裏にこっそりと安置していたキリシタン菩薩の寺でもある。キリシタン菩薩、マリア観音などという名前は時折聞くがいずれもかつてキリスト教禁止令の下キリシタンが弾圧を受けていた時代の名残。

 またこの寺には四国88か所の中で最も古い銅板納め札が発見されたお寺でもある。発見者はアメリカ人。寺の縁起によれば聖武天皇の勅令で行基菩薩が開山をした。弘法大師により札所になるがその後失火で衰退、17世紀に現在の場所へ移転され京都の仁和寺の末寺として再興された。

 入口から道路を挟んで向かい側に駐車場があるのだが、駐車場も含めて昼間は逃げる場所もない。夏場はかなり暑いお参りになるのは必至。門前の道路は一方通行でこの道を行くと北条方面へ出られる。

 本尊は阿弥陀如来だが、十一面観世音菩薩を祀る観音堂もある。

 札所53番を打ち終えると今治市内へと移動をします。次回は今治市内の札所を紹介しましょう■

by fibich | 2015-08-19 23:46 | 旅の話

詩と写真の日記

by 遊羽(なめタン)
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