2014年 08月 25日
秘境駅 帰路
秘境駅小和田から車を置いてある三河川合駅まで戻ってくると土砂降りだった。時間は2時半過ぎだったと思う。当初この後は浜松まで戻って年に一度は行っているラリーズカンパニーにでも行こうかと思っていたのだが、お腹も空いたし何よりせっかくの小和田駅で食べたコンビニ弁当があまりにも不味かったので何か美味しいものでも食べたかった。頭の中で即座に図式が…
◆道の駅 信州新野千石平
◆飯田の「三河家」 ここに来るために飯田まで来たと店の小父さんに言うと高笑いしていた
◆飯田「三河家」の内部、いかにも食堂という雰囲気が懐かしい。
やがてお蕎麦がやって来たのだが本当においしかった。ママが頼んだ五平餅も手作りで特にゴマ味噌が香ばしく、茄子のおひたしも美味しかった。煮カツも美味しいしまさに何を食べても美味しかった。さらにお店の方々がとてもフレンドリーで食事の後もしばらく話し込んでしまうくらい。「今日これから飯田で花火があるんだよ。」とか「飯田に来るんだったら春、桜がきれいなときに来なきゃダメだよ。」などといろんなお話ができた。いい思い出ができたのと同時にまた「会いたくなる人」との出会いがあったなと思った。ただ秘境駅に行って不思議な時間を過ごすだけでも十分だったのだが、こうしてなんとも人情味のあるお店で美味しいものを食べられたことも嬉しく思った。このために100㎞以上の道のりを走って飯田までやって来て良かったなと思った。
◆また来ますよ
三河家のおじさんが「帰るときはそこの道をとにかくまっすぐ行けば松川インターがあるからそこから高速に入れば料金ちょっと安くなるよ。」と教えてくれたので言われたとおりに運転をしたが、途中の道はわりと狭く真っ暗でだいぶ怖い思いをした。しかしこの道でなければ町外れでかなり遠い飯田インターから中央道に入らなければならず、あながち間違いでもなかったんじゃないかと後になって地図を見て納得。
◆諏訪湖SAから見た夜景
今いる場所(飯田線沿線)+美味しいもの=飯田
飯田=伊那地方=お蕎麦や馬刺し
ということで無茶もあると思うのだがまだ全然開通していない三遠南信道終点の飯田にまで行ってみようと思い立つ。三河川合駅からだとすぐ近くにある国道151号線を北上すればいいのだ。これは簡単で楽ちん。予定のお店を検索…と思ったのががこの駅は携帯の電波が3Gも入らないので一先ず出発してからと言うことで出発。
ところが楽勝と思っていた飯田までの道のりは想像以上に遠かった。それは最初に見かけた案内標識で飯田は100㎞以上も先だと知った。知ったときにはもう遅い。とにかく飯田に向けて走るしかなかった。
途中にあるコンビニで休憩しながら飯田でのお店を探し、目星をつけた場所をカーナビの目的地として再び国道151号を北上。道を間違えなかったらずっとこの国道を進むが、何かの拍子に道を外れて間違って別の国道に入り込んだらこの一帯は悉く道が途中で終わるか険しい林道に迷い込むらしいのでその当たりにも気をつけて運転をした。特に一番違いの国道152号線は悪名高き青崩峠や地蔵峠などトンネルが掘れない場所へと連れて行ってくれるからだ。今日はそんな場所には用事はない。
国道はだんだんと山に入り、途中からいきなり狭くなってしまう。ちょうど愛知県と長野県の県境の当たり。そしてその先の長野側には道の駅があった。
道の駅はだいたい地産品が数多く売られているが、ここの道の駅ではイナゴ佃煮(しかも大量)や蜂の子などいわゆる「伊那の悪食」も売られていた。これを見てああ伊那に来たんだなとつくづく感じるものだった。
長野県の南部は伊那地方と呼ばれているが、実はこのあたりに来るのはざっと30年くらいぶりの事であった。一度だけ岡谷から飯田線に乗り、途中の飯田で一泊してさらに飯田線を南下して豊橋まで行ったことがある。当時は電車も戦前に作られたようなオンボロの電車ばかりで電車の墓場なんだなと思ったものだ。首都圏に住んでいると伊那って場所は他の場所よりも数段行きづらいものだなと思う。
で、伊那というと思い出すのがざざ虫やイナゴ、腐敗直前の馬刺しなどといういわゆる悪食。これはかつて閉ざされた地で冬場の蛋白源が確保できず、夏の間から準備したもので冬を越さなければならなかった当時の習慣が今も食文化として残っている。「悪食」なんて書くと悪そうなイメージが先行するが、要するにちょっと手をつけるに戸惑いそうなこの地方の食品のことでしかない。(しかもわりと美味が多いらしい)
もう一つは「おじろく」という風習を思い出すのだが、こちらはここで書く必要もないし、書けば必ずやこの地方のイメージダウンにつながるので控えておく。(自分は民俗学が好きなのでこういう話はとても興味があるのだが)
この道の駅の先もまた険しい道が続くのだがこれも伊那だからなのかなと思いながら運転を続ける。夕方くらいになってようやく中央アルプスが見え始め、飯田も近いことがわかった。
ここまでして飯田まで来て食べたかったのはやっぱりお蕎麦だ、そしてもしもメニューにあるのだったら馬刺しも食べたかった。そして目星をつけた店が飯田市内、鼎(かなえ)駅の近くにある「三河家」というお店である。
この三河家という店、食べログでは何を食べてもおいしいと非常に主観的なコメントしかなく、何食べたらいいんだろうとさんざん迷った末、僕はとろろそば、ママは五平餅定食(そばと茄子おひたし付き)、それと煮カツも頼む。この日は小和田駅にいたとき以外はほとんど気温も25度以下で涼しく、飯田に至っては冷え冷えとしていた。お蕎麦も熱盛りで食べたいところだがやっぱりざるで食べた方がおいしいだろうと思い煮カツも付け足した。
中央道に入ると途中いくつかサービスエリアに寄って休憩をしながら八王子JCTで圏央道に入り帰ってきた。圏央道はかなり便利だと今回は思った。家に着いたときにはすでに夜中の1時近くになり、総走行距離もざっと600㎞を越えるくらいだった。ときどきこんな長距離ドライブを日帰りでやってしまうが、今回は文句なく楽しかったと思う。
秘境駅小和田にまた行くかどうかはわからない、また行ってみたいような気もするし、一度行った思い出を良いものとして心の中にしまいながら美化させ続けるのもまたいいことかも知れない。この夏はほとんどどこにも出かけられなかったのでそれだけに印象深い旅になった■
あ、それで前回の例の木の実だが、あれは胡桃の実。すっかり書くのを忘れていた。胡桃の木は枝振りも葉も独特で一度見れば忘れないものだが、なかなか都会に住んでいると見る機会もないと思う■
by fibich
| 2014-08-25 23:33
| 旅の話