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幻想と日常 ~La Fantazio kaj la Kvotidiano

【詩】『遠い国の歌』

夜が泣いている時
その言葉は
口にしないで

空に星がない時
無理に上を向いて
その歌を歌わないで

海に船が見えない時
そんなに遠くへ
思いを馳せないで

そのレコードを聴いている時
そんなにたくさん
ため息はつかないで

あの国から来た兵士は
そろそろ外套を探して
この街を出て行こうとしている

星がきれいな時
そんなに理屈っぽく
話さないで

高速道路に車が少ない時
ラジオから聞こえる
メロディを口ずさまないで

故郷を思い出すまで
どうかその歌だけは
歌わないで

遠い国へと流れ着く
やせた旅人を
記憶の引き出しへとしまい込まないで

その歌を思い出すまで
賑やかな通りへ
私を連れ出さないで

その顔を思い出すまで
どうか夜の暗さを
忘れないで

この旅が終わるまで
どうかあの人のことを
思い出さないで

この旅が終わるまで
どうかあの人のことを
忘れさせて

月のきれいな夜だから
どうか

遠い国への憧れに乗って
私はまた旅に出るから
どうか


初出:2002年
by fibich | 2005-01-17 23:22 |

詩と写真の日記

by 遊羽(なめタン)
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