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幻想と日常 ~La Fantazio kaj la Kvotidiano

三陸の思い出(4)

宮古の中の浜キャンプ場の思い出、まだまだ続きます。

毎日、それも土日もなく(週末は特に忙しい)働き続け、仕事が終われば夕飯食べて
女遊戸(おなつぺ)海岸でごろんと横になり星空を眺め、眠くなったら寝るの生活が
続く中、何かが足りないことに日々感じていた。

それは風呂であった。

キャンプ場管理棟にシャワーはあったのだが、これはキャンプ場を利用する人のためのもので
原則使えなかった。したがって汚い話であるが水道水で体を拭いて日々しのいでいたが
それも2週間にもなると限界が来ていた。

ある早番の日に親方仕事が上がったら宮古の町に下りてもいいかと訊くと、
「なんだい、これまで一度も行かなかったのか。遠慮しないで早番の時は好きにしなさい。」と
あっけなくいわれてしまった。とは言っても早番で上がって海沿いのテラスでボケーッと
休んでいると必ずと言っていいほどヘルプの要請があって結局暗くなるまで働く事が
多かったので、宮古の町に下りるなんて考えも及ばなかった。

キャンプ場から10分程歩くと国道45号線があり、中の浜のバス停があった。このバス停
から宮古方面に行くバスが田老からやって来るのだ。バスで宮古の町までは30分ほどの
距離。実に簡単に宮古に行けるが、問題があった。

それはこの中の浜のバス停がトンネルを出たすぐの場所にあったのだが、田老方面の
中の浜バス停はトンネルの向こう側なのだ。つまり帰りはトンネルの先で下ろされ、
キャンプ場まで帰る道に戻るにはトンネルを一度通らなければならない。
国道45号線は三陸の主要国道で通行量も多く、トンネルには歩道がない、さらに
非常に長いトンネルでもあった。そんなわけで帰りは宮古駅から三陸北リアス線に
乗って市ノ渡駅から国道に向かって歩き、国道を横断して女遊戸の集落へと向かって
帰らなければならなかった。市ノ渡から国道までは真っ暗になるため日没前には
帰らないと危険だった。

宮古の町に出てくるとまずは銭湯で体を洗う。当然だがこれが一番の目的、その後
町の本屋を数軒回って文庫本を買いあさり、町中にあるモスバーガーで久しぶりに
都会の味を楽しむ、モスバーガー一つで都会の味も何もないが、当時モスバーガーが
大好きだったのでお気に入りの場所だった。買ってきた本をそこで読むこともあった。

帰りは三陸北リアス線で市ノ渡まで行き、そこから女遊戸の集落を経由して
キャンプ場に戻るまでにはざっと40分の道のりである。こうしてさっぱりして帰ってくると
あとはビールを飲んで寝てしまうのだった。

キャンプ場で働いていた間、宮古の町には何度か下りたが、ある日いつも乗る列車に
乗り遅れて次の列車に乗らなければならない事があった。市ノ渡駅を出るとすでに
真っ暗。街灯もなく本当にどこを歩いているのかもわからない山道を月明かりを頼りに
国道に出て、国道を横断した後も再び闇に入り込み女遊戸の集落を目指して
歩いた。非常に心細い道だったが、女遊戸の集落が近づくと田んぼに無数の蛍が
飛んでいてそれが目印になった。女遊戸の集落は実にありがたかった。

女遊戸の集落からキャンプ場まではだいたい10分くらいだったと記憶している。
女遊戸海水浴場とキャンプ場の間にあるトンネルも真っ暗になるが、そんなに
不気味には感じなかったものだ。

早番の次の日はたいてい中番(9時スタート)か遅番(正午スタート)だったので
まるで半日休みをもらったように過ごすことができた。

つづく
by fibich | 2011-04-19 00:47 | 旅の話

詩と写真の日記

by 遊羽(なめタン)
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